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50代から描く!シスコ・パラダイス

世田谷美術館に行ってきました。

先日、東京は砧公園の中にある世田谷美術館へ行ってまいりました。
日曜日だったこともあり、朝から家族連れで賑わっていた砧公園ですが、一歩美術館の中に入れば、
予約日時指定制のこともあり、混雑することもなく、じっくりと塔本シスコさんの世界観を拝見できました。
その鮮やかな色合いと50歳から独学で身につけた絵画である点に、俄然興味が湧き世田谷へと足を運びました。

世田谷美術館

塔本シスコさんの生涯

塔本シスコさんは1913年、熊本県に生まれます。養父の夢がサンフランシスコ行きだったことから、シスコと名付けられたそうです。可愛いお名前ですよね。20歳で塔本末藏さんとご結婚し、一男一女を授かります。ところが、46歳の時に不慮の事故でご主人が急逝。心身ともに衰弱する日々から立ち直り、画家である長男の賢一さんが家に残した作品を包丁で削り落とし、自分の作品を描き始めます。シスコさん53歳の時です。この絵を見た賢一さんは心を動かされ、制作の後押しをしようと決意します。

4畳半のアトリエ 熊本から大阪へ

シスコさんは長年過ごした熊本から、ご長男の賢一さんとともに生活するために大阪へ引っ越します。息子夫婦、孫との5人暮らしで、シスコさんの4畳半のお部屋がアトリエでもありました。旺盛な制作意欲で2005年91歳で世を去るまで、膨大な作品を制作します。公募展で入賞したこともあり、次第に展示会が開かれ、発表の場が広がっていきます。「どがんねぇ、よかでしょうか」と来場者に気さくに話かけられていたそうです。その絵は鮮やかな色合いの花、家族、猫、近所の風景、思い出の熊本の記憶と、自由自在に心のままに描かれ、キャンパスのみならず、しゃもじやガラス瓶、お着物にまで及び、その熱量に驚くばかりでした。

かかずにはいられない!人生絵日記

今回初めて塔本シスコさんの存在とその絵を垣間見ることができて、大変幸せでした。その絵は鮮やかなエネルギーに満ちていて、自由奔放で、思わず笑顔になってしまうような愛嬌があります。50歳から描くことは、心のありのままの姿を表現したもので、暖かい家族の理解と愛情に恵まれ、無垢な感情の発露のように感じました。人生に辛いことはつきものですが、心捻じ曲げることなく、素直に明るく生きたいなと感じさせてもらえる展覧会でした。